万引き家族

2018-06-18
日本映画が21年振りに、カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを獲得した。
受賞作「万引き家族」は、東京の下町で、万引きで生計を立てながら暮らす、
とある家族の姿を描いた作品。

受賞後の記者会見で、監督や俳優が思い思いに、感謝と感激、
作品やスタッフへの思い入れを語っているのが印象的だった。
その中で、是枝裕和監督のコメントがひときわ印象に残った。

劇中で、絵本『スイミー』が話がエピソードとして登場する。
是枝監督は、撮影前の取材を振り返って、こう語った。
「印象に残っているのは、親の虐待を受けていた子たちが暮らす施設。
取材をしていると、女の子がランドセルを背負って帰ってきた。
『何の勉強をしているの』と聞いたら、国語の教科書を取り出して
『スイミー』を読み始めた。
職員が『皆忙しいんだからやめなさい』と言っても聞かずに読み通した。
皆で拍手をしたら、すごく嬉しそうに笑った。
この子はきっと、離れて暮らしている親に聞かせたいんじゃないか、と思った。
朗読している女の子が頭から離れなくて、すぐ脚本に書いた。」

是枝監督は、続いて、テレビプロダクション所属時の経験に触れ、
「誰か一人に向かって作れ」と先輩に言われ、そのことをずっと守ってきたと明かした。
「不特定多数の人に向かって送るものほど、そうすることで、結果的に多くの人に伝わる。」
「今、はっきりわかったんですが、
僕は『スイミー』を読んでくれた女の子に向かって作っているんだと思います」と語った。

誰か一人に向けて作ることで、結果的に多くの人に伝わる……。
一見、逆説的な印象を受けるが、歴史をひもといてみると、
このような例は、枚挙に暇がない。
いわゆる古典には「手紙」というジャンルが存在するし、
数百年、数千年語り継がれたり、読み継がれているような古典でも、
例えば師匠が弟子に語ったりと、特定の人に向けて語った作品が多く存在する。

なぜ、一人に向けて作った作品が、普遍的な価値を持つのだろうか?
いろいろな見方があろうが、一つの考え方としては、
「相手のことを考え抜いているから」ではないだろうか。
仮に最初から不特定多数の人に向けて作ると、
場合によっては、メッセージがぼやけてしまうかもしれない。
一方で、たった一人に伝えようとすれば、伝えようとするメッセージは焦点が絞り込まれる。
相手に対する思いの強さが、結果的に、他の人の心も打つのかもしれない。

是枝監督の言葉を借りれば、「万引き家族」が、
「『映画が公開され劇場で見られる』という通常の枠を超えて、多くの人に届いている」
という状況になっているのは、誰もが認めるところだろう。

「届く」と言えば、最近、「君に届け」という映画が話題になった。
この青春映画(原作は漫画)の題名を、あえて野暮ったく補足すると、
「私の思い(恋心)が君に届け」という感じになるであろうが、
この作品がヒットした理由は、
「人に思いが届くのは難しい」と多くの人が感じていることと無関係ではないだろう。

恋心に限らず、人に思いが伝わるのは難しい。
それでも人は人に思いを伝えようとする。
難しい状況の中でも、思いが伝わったとき、人の心を打つものがある。

人材紹介の難しさは、いろいろあるが、一つには「伝える」ということの難しさがある。
例えば、企業様の採用に対する思いや考えを、代理人として、転職希望者様に伝える。
代理人という立場の限界もあれば、仲介する立場だからこそ出来ることもある。
転職希望者様に、ご本人が気づいていないご自身の可能性を伝えることもある。
正解がない仕事だが、難しいからこそ、お客様の採用が上手くいったときや、
転職や仕事が上手くいったとき、非常に喜ばれるのだと思う。
当社コンサルタントの心のつぶやきを言葉にするとしたら、
「君に届け」というよりは、「どうかあなたに届きますように」という感じになるが、
メッセージが届くためには、相手への思いや、相手を考えた伝え方が欠かせない。
そのために、定期的な勉強会などを通じて、互いに切磋琢磨しながら、研鑽に努めている。
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